TORブラウザとVPN接続でインターネットを匿名で利用する。

インターネットを匿名で利用する方法として、TORブラウザの使用とVPN接続があります。

まず、TORブラウザです。

TORブラウザはWEBを閲覧するブラウザですが、TORブラウザを使うと通信元を隠蔽できます。途中でTORネットワークを経由するからです。WEBサイトの管理者は誰がアクセスしてきたのかわかりません。「誰が」というのは通信元のIPアドレスです。TORブラウザを使ったときの場合です。

WEBサイトから見ると、アクセス元はTORネットワークのEXITノードのIPアドレスとなります。TORブラウザを使っている人のPCのIPアドレスではありません。WEBサイトのアクセスログにはEXITノードのIPアドレスが残ります。

EXITノードのIPアドレスは公開されているため、WEBサイトの管理者はTORネットワークからのアクセスであることは判断できます。これによりTORネットワークからのアクセスを遮断することもできます。サイトによってはTORネットワークからのアクセスを遮断しているサイトもあります。

一方、ISP(インターネットサービスプロバイダ)はTORブラウザを使っている人がどこのWEBサイトにアクセスしているのかはわからないものの、TORネットワークを利用しているということはわかります。ISPはTORネットワークのENTRYノードへのアクセスがわかるからです。

次に、VPN接続です。

VPNは Virtual Private Network の略です。VPN接続を使うことにより、WEBサイト閲覧の規制の厳しい国(中国やロシアなど)に住む人が、他の国や地域のWEBサイトを閲覧するのに利用したりします。

例えば、中国に住む人がアメリカの中国批判のWEBサイトを見ようとしても、中国のISP事業者がそのサイトに規制をかけているため見ることはできません。ですが、VPNを利用すると(VPNサーバーは世界中にあり、そのどこかを経由させると)目的のWEBサイトを見ることができます。中国のISP事業者がVPNサーバーを規制の対象外にしているためです。VPNサーバーについても規制をかけられると思いますが、かけてしまうと、中国にある企業の事業運営にも影響がでてしまうため穴となっているのでしょう。

WEBサイトから見たときの通信元のIPアドレスですが、通信元はVPNサーバー(もしくはVPN事業者が提供するIPアドレス)となります。WEBサイトのアクセスログには、そのIPアドレスが残ります。VPNサーバーにもアクセスログがありますから、VPNサーバーのアクセスログとWEBサイトのアクセスログを突き合わせることでブラウザを使っている人のPCのIPアドレスをつきとめることはできます。法的な要請を受ければ、事業者はログを提供するでしょう。ですので、VPN接続すれば匿名のインターネットができるわけではありません。

ただVPN事業者の中には利用者のプライバシー保護のために、ノーログポリシーをとっているところもあります。ノーログポリシーとはログを残さないということです。ノーログポリシーには正確な定義はなく、事業者ごとに解釈や技術的な実施方法が多少異なるようです。

TORブラウザとVPN接続を見てきましたが、この2つを併用した場合です。

VPN接続を利用することでISPに対してTORネットワークへの接続を隠すことができます。TORブラウザを使用してノーログポリシーのVPN事業者を利用することで、匿名性が格段に高くなります。

ubuntuでのVPN接続の設定方法

ubuntu20.04 LTSでVPN接続をしてみました。利用したVPNサーバーは筑波大学の学術実験プロジェクトのものです。サイトには利用できるVPNサーバーの一覧があります。利用したいVPNサーバーを決めて「OpenVPN設定ファイル」をクリックします。

ダウンロード画面が表示されます。DDNSホスト名が埋め込まれているovpnファイルと、IPアドレスが埋め込まれているovpnファイルがあるのですが、DDNSホスト名が埋め込まれているovpnファイルのほうをダウンロードします。

DDNSホスト名が埋め込まれているovpnファイルを選ぶ理由ですが、この画面の(下のほうにある)ヒントに次の記載があります。

多くの場合は、DDNSホスト名が埋め込まれている.ovpnファイルを使用することを推奨します。接続先のVPNサーバーのIPアドレスが変化しても、DDNSホスト名は変わらないためです。ただし、いくつかの国・地域では opengw.net というDDNSのドメイン名へのアクセスが禁止されている場合があります。このような場合は、IPアドレスが直接埋め込まれている.ovpnファイルを利用してください。

ubuntuのVPN設定に入ります。設定画面からネットワークを選びます。VPNのところにある「+」をクリックします。

VPNを追加の画面が表示されます。ファイルからインポートをクリックします。先ほどダウンロードしたovpnファイルを選択します。

自動で設定内容が反映されます。追加ボタンを押下します。

VPNの設定は、これで完了です。

インターネットに繋がっている状態でVPNの設定をオンにすると、VPNサーバーを経由して目的のサイトにアクセスします。

ifconfigで確認すると、VPNトンネルが出来ていることが確認できます。

IPアドレスですが、VPNサーバーを経由することにより元々の通信元のIPアドレスを隠蔽できます。PCとVPNサーバー間の通信は暗号化されます。

今回は public-vpn-90.opengw.net(219.100.37.55) という表記になっていたVPNサーバーを利用したのですが、WEBサーバーのアクセスログの通信元IPアドレスは 219.100.37.236 となっていました。IPアドレスが 219.100.37.55 と 219.100.37.236 とで異なっています。このへんの仕組みはよくわからないのですが、VPNサーバーの属するネットワークにあるいづれかのIPアドレスが割り当てられたのだと思います。